コラム
野菜の保存方法

野菜には、さまざまな保存方法があります。今回はピクルスや干し野菜の作り方、野菜の冷凍保存方法を紹介します。これらを活用して、料理の幅を広げたり、使いきれない野菜をうまく加工・保存して食品ロス削減に役立てたりしてください。



長期保存が可能な加工法(ピクルス)


ピクルスというと、ハンバーガーの中に入っているものを想像する人が多いのでは。これ以外では、日本人にはなじみの薄い食品かもしれません。しかしピクルスには、メリットがいっぱい。保存ができて栄養面にも優れている上、彩りも豊かで食卓が華やかになります。


ピクルスには、次のようなメリットがあります。

①保存ができる

ピクルスに使われる食酢の主成分酢酸は、強い酸性。細菌や微生物の発生を抑えるので防腐力や殺菌力が高くなり、保存が可能になります。


②健康・美容に効果的

この酢酸には、体内での脂肪合成や内臓脂肪蓄積を低下させる効果が期待できるそう。また、漬け込む野菜からビタミンやミネラルも摂取できるので、健康・美容に効果的なのです。


このようなメリットのあるピクルスは、家庭でも手軽に作ることができます。野菜を使いきれないときなどに作ってください。では、ピクルスをおいしく作るコツをお伝えします。


ピクルスには、向く野菜と向かない野菜があります。


・ピクルスに向く野菜

にんじん、大根、きゅうり、かぶ、パプリカ、セロリ、ミニトマト、カリフラワー、ブロッコリー、みょうがなど



・ピクルスに向かない野菜

ほうれん草、小松菜、水菜、チンゲン菜などの葉物野菜



葉物野菜はえぐみや苦みが出るのでピクルスに不向きですが、ピクルスに向いている野菜は多くあります。何で作ったらよいか迷うときは、最初は余った野菜で挑戦してみてください。


市販のピクルスは1年間は保存できますが、自家製はなかなか難しいものです。そこで、少しでも日持ちさせる方法を紹介します。ちなみに、自家製の保存期間は1週間程度です。


・野菜を30秒~1分湯通しする

野菜を湯通しすると殺菌効果が上がります。ただし、生食できる野菜は湯通し不要です。


・保存容器を煮沸消毒する

保存容器は耐熱性のものを選び、1分間煮沸消毒します。また金属製のふたは酸化するので、使用は避けてください。



さっぱりとした酸味のピクルスは、箸休めや常備菜にピッタリ。また暑くて食欲のないときは食べやすいので、今年の夏は夏バテ対策にピクルスを常備しておくと良さそうです。




【ピクルスのレシピ】

材料(4人分)

・にんじん 1/2本

・セロリ 1/2本

・きゅうり 1/2本 

・玉ねぎ 小1/2個 ・ミニトマト 2個


(調味液)

・食酢 100ml

・砂糖 大さじ1と1/2

・塩 小さじ1

・赤唐辛子 1本

・ローリエ 1枚


手順

①野菜を洗い水気を拭き取る。にんじんの皮は皮むき器を使ってむく(気にならない人は、むかなくてOK)。セロリは筋を取る。玉ねぎは茶色の皮をむく。ミニトマトはヘタを取る

②にんじん、セロリ、きゅうりは保存容器の高さに合わせて棒状に切る

③玉ねぎはくし形切りにして、ミニトマトはつまようじなどで数か所穴を開ける

④にんじん、玉ねぎは30秒~1分間湯通しして冷ます

⑤保存容器に野菜と調味液を入れて、冷蔵庫に入れる(約半日漬け込むと、食べごろ)



干し野菜


余った野菜の使い道に困ったときは、干し野菜を作るのはいかがですか。野菜は水分が抜けると、うまみや甘みが増します。また良い「だし」も出るので、汁ものや煮ものなどがおいしくなります。さらに水分が抜けることで、腐りにくいというメリットも。


干し野菜には向いている野菜、向いていない野菜があります。



・向いている野菜

根菜類、きのこ類、いも類、かぼちゃ、玉ねぎ、ピーマン、トマト、ナス、ブロッコリー、白菜、キャベツなど


・向いていない野菜

レタス、もやしや貝割れ菜



水分が多いものや細いものは不向きですが、干し野菜に向いている野菜も多いですね。こちらも、余った野菜でまず挑戦。


一口に干し野菜といっても、セミドライとフルドライの2種類の干し方があります。どちらも冷蔵・冷凍保存が可能です。ただし、保存期間は野菜の種類や冷蔵庫・冷凍庫によって異なるので、野菜の様子を見ながらなるべく早く使ってください。


・セミドライ

表面は乾いているけれど、中に水分が残っている状態。天日干しで5~6時間。 


・フルドライ

中まで乾燥している状態。天日干しで5~6時間を2~4日続けます。



それでは、干し野菜の作り方を紹介します。

①野菜を洗い水気を取ってから、乾燥しやすいように薄めまたは小さめに切る

②野菜の切り口を表にし、重ならないようにザルや網の上に並べて、日当たりや風通しの良い場所で天日干し。専用の干し網を使うのも可

③夕方は夜露にぬれないように室内へ。セミドライはこれで完成。フルドライはこの手順を2~4日繰り返す



こうしてできた干し野菜は、以下のように活用できます。

・揚げもの→水分がないので、カラッと揚がる

・炒めもの→水分がないので、シャキシャキになる

・ピクルス→湯通し不要で、そのままピクルス液に漬けられる

・煮もの→煮崩れしにくく、調理時間が短縮


良いことづくめの干し野菜。まずは試食を兼ねて、少量作ってみてください。



野菜の冷凍保存方法


野菜の冷凍保存は、今や定番。でも食べてみると、味や食感が変わってガッカリしたことはありませんか。冷凍保存のコツをつかめばおいしく保存できますよ。


冷凍保存には、向いている野菜と向いていない野菜があります。



・向いている野菜


ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、きのこ



・向いていない野菜


レタス、トマト、にんじん、大根、ごぼう(水分や繊維質の多い野菜)



野菜を冷凍すると中身がスカスカになったり、水っぽくなったりします。これらを解消するには、すばやく冷凍すること。このポイントを以下にまとめました。


①野菜を洗い、水気を丁寧に拭き取る

②下ゆで(※1)した野菜は、粗熱を取る

③野菜を食べやすい大きさに切る(※2)

④冷凍保存袋(ファスナーのついたもの)に入れ、できるだけ空気を抜いて口を閉じたら、平らにして並べる

⑤食品保存袋に入れた野菜を、熱伝導の良いアルミのバットなどにのせて冷凍庫へ。なければ、アルミホイルで包んで冷凍する(※3)


※1)野菜を冷凍前に下ゆでをすると、変色しにくい

※2)献立に合わせて野菜を切っておくと、そのまま料理に使えて時短になる

※3)冷凍庫の扉を開閉しない時間帯(就寝時や外出時)に冷凍すると、効率よく冷凍できる


冷凍した野菜は、凍った状態で使いましょう。冷凍すると野菜の細胞や組織は破壊されて、解凍したときに水分が溶けて流れ出ます。この特徴を生かして、凍った状態の野菜を加熱調理すると、野菜に味が良く染みます。というのは、解凍して流れ出た野菜の水分の代わりに、調味料の塩分が染み込んでいくからです。理科で習った浸透圧です。また、溶け出た野菜の水分にはうまみや栄養が含まれているので、汁ものや煮ものがおいしくなります。


冷凍の保存期間の理想は1週間、長くても3週間以内に食べきりましょう。まな板や包丁には雑菌が付いているために野菜が傷みやすくなりますし、冷凍庫を開け閉めすることで庫内の温度が上がり野菜が劣化するからです。特に暑い夏は要注意。少しの工夫で、冷凍保存した野菜はこれまで以上に大活躍しそうです。


食品の保存方法を知ることは食品ロスをなくすだけでなく、料理の幅を広げたり、野菜を切る手間が減って時短になったりと、良いことがたくさんあります。できることから、ぜひ試してくださいね。



文 / 松原 夏穂