コラム
ゼロ・ウェイストでフードロス削減

「ゼロ・ウェイスト」という言葉を知っていますか。「ウェイスト(waste)」は、英語で「浪費」や「廃棄物」を意味します。つまり、浪費や廃棄物をなくして、ゴミを出さないことです。今回は、フードロス削減の観点からゼロ・ウェイストを実現する方法をお伝えします。



食品廃棄問題と長持ちさせるコツ


フードロス削減のためにできることの一つが、食品を長持ちさせること。ここでは、野菜の保存方法についてお伝えします。


<野菜保存の基礎知識>

野菜は、収穫後も呼吸をしています。この回数が増えると、「エチレン」という植物を老化させるホルモンが発生しやすくなります。よって、野菜の鮮度を保つには、野菜の呼吸数を増やさないよう日光の当たらない暗い場所で2~5℃の低温で保存することが大切です。それには冷蔵庫が最適ですが、全ての野菜が冷蔵保存に向いているわけではありません。また、保存方法も野菜によって異なるので注意が必要です。


野菜の保存のポイントは、育った環境に近い状態で、ということ。原産地が熱帯や亜熱帯地方のいわゆる夏野菜(きゅうりやピーマン、トマト、なす、かぼちゃ、にがうりなど)は、冷蔵保存に向きません。変色したり、水っぽくなったりする「低温障害」が、起こりやすくなるからです。ただしカットした場合は、「エチレン」が発生しやすくなるので、ラップに包むなどして冷蔵庫で保存しましょう。


野菜の保存方法と、これに適した野菜を紹介します。


・新聞紙で包む

保存方法としてよく用いられるのが、新聞紙で包む方法です。新聞紙には保温や保湿の効果があるため、大いに活用できます。ただし、この方法は野菜をカットしていない場合に限ります。


適した野菜……根菜(じゃがいも、ごぼう、さつまいも、里いも、大根、にんじん、かぶ)、白菜、ねぎなど


・ラップやポリ袋で保存する

どの野菜もカット後は、ラップに包んだりポリ袋に入れたりしてから冷蔵庫で保存しましょう。なぜなら、切り口から「エチレン」が発生しやすくなるからです。ふんわり包むのではなく、空気が入らないように野菜とラップを密着させて包みます。


また、夏野菜は水分が多くて乾燥に弱いため、カットしていなくてもラップに包んだりポリ袋に入れて密封しましょう。ただし、冷蔵庫に入れずに常温で保存します。


適した野菜……カットした野菜全般、夏野菜全般


・根と葉を切り落とす

葉付きの根菜は、購入後すぐに根と葉を切り落とします。野菜は収穫後も成長を続けているので、葉付きの状態だと葉が根の栄養分を吸収してしまうからです。こうなると根はスカスカになって味も落ちるので、根と葉それぞれを新聞紙に包んで冷蔵庫で保存します。


適した野菜……大根、かぶ、にんじん


・種やワタを取り除く

種やワタは水分が多く傷みやすいので、購入後すぐに取り除いてラップで密封し、冷蔵庫に保存します。


適した野菜……かぼちゃ(スプーンで種やワタをくり抜く)、パプリカ


・つるす

湿気が苦手な玉ねぎやにんにくは、直射日光の当たらない通気性の良い場所でつるして保存しましょう。かごや網の袋、ストッキングなどを使うのがおすすめです。


適した野菜……玉ねぎ、にんにく


以上が野菜の保存の基本です。これら以外にも傷みを防ぐために、野菜の水滴は拭き取る、野菜が上下に重ならないようにするなどを意識してください。



野菜を丸ごと楽しむアイディア

長持ちさせた野菜は、捨てる部分を極力減らしていただきましょう。皮などには栄養成分が含まれていて、調理次第では食べられるものも多くあります。


「一物全体」とは、食材を丸ごといただくという意味の言葉です。これを実践できる、野菜の捨てがちな部分で一品になる調理方法を紹介します。


残留農薬を心配する人もいるかもしれません。厚生労働省は全ての農薬などに残留基準を設けており、農林水産省は残留基準に沿って農薬取締法により使用基準を設定しています。食品の輸入時には、検疫所において残留農薬の検査等を行っています。


・大根やかぶ、にんじんの皮と葉

皮は厚めにむいて細かく刻み、みそ汁や炒め物、和え物に使用します。葉は細かく刻み、みそ汁や炒め物、和え物、混ぜご飯、かき揚げなどに。大根は皮のまま大根おろしにしても食べられます。


・ごぼうの皮

ごぼうは土をタワシなどで軽くこするなどして丁寧に洗い流し、皮付きのままカットした後に水にさらします。何度か水を取り替えて、水が透明になるくらいまでが目安。アクが抜けるので皮付きでも違和感なくいただけます。


・セロリの葉

茎に比べて香りが強いため、捨てられがちなセロリの葉。水にさらしてアクを抜くと、食べやすくなります。スープに入れると味に深みが出ますし、天ぷらにするとさわやかな香りを楽しめます。また、肉と一緒に炒めると肉の臭みが抑えられます。香りを逆手に取って、おいしくいただきましょう。


・しいたけの軸

しいたけの軸は石づき(先端の黒ずんだ部分)を切り落とし手で割いてから、みそ汁や炒め物などに使用します。しいたけの傘と同じくらいのうま味があります。


・かぼちゃの種

種はワタの部分を取り除いて洗い、クッキングシートに並べて電子レンジで1~2分加熱。種の端にハサミで切り込みを入れてから、皮をむきます。これをフライパンに入れて、弱火でからいりします。香ばしい風味で、ピーナツのような食感です。



べジブロスを作ってみよう


野菜の皮などは食べるだけでなく、「だし」にもなります。「ベジタブル(野菜)+ブロス(だし)」を略した「ベジブロス」がこれ。ブイヨンとの違いは、動物性の食材が入っていないことです。


くせがなくうま味があるので、和洋中どの料理にも活用できます。みそ汁やスープ、カレーなどがおすすめです。


ベジブロスを作る際に注意が必要なのは、適した野菜とそうでない野菜があることです。ベジブロスに適しているのは、玉ねぎの皮とヘタ、セロリの葉、パセリの茎、にんじん・トマト・なすのヘタ、じゃがいもの皮など。適していないのは、苦みが強い野菜(にがうり、ピーマン、かぼちゃの種)や、アクが出やすい野菜(キャベツの芯やブロッコリーの茎)などです。


ベジブロスの作り方は以下の通りです。

①鍋に水1300mlと野菜の切れ端約250g、酒小さじ1を入れて火にかける。

②沸騰するまでは強火にして、沸騰したら弱火で20~30分煮込む。

③火を止めてザルでこす。


注意点:

▶︎アクも取り除かなくてOK。

▶︎野菜の切れ端は傷みを防ぐため、水気を拭き取ってからビニール袋に入れて、空気を抜いた状態で冷蔵庫に保存します。

▶︎粗熱を取り、密封容器に入れて冷蔵庫で保存します。3日以内に使い切りましょう。

▶︎冷凍保存も可能。製氷皿に入れて小分けにして冷凍すると、必要に応じて使えるので便利です。


使う野菜によって、味や色が異なるのがベジブロスの特徴。試行錯誤しながら、お気に入りの味を作ってみてください。



コンポストの方法とその活用方法

フードロス削減に取り組んでも、どうしても出てしまうゴミ。これらを堆肥に生まれ変わらせるのが「コンポスト」です。


野菜の切れ端などの生ゴミや落ち葉などの有機物を、微生物が分解して堆肥にする「コンポスト」。生ゴミを減らし、栄養豊富な堆肥が作れると注目を集めています。また、生ゴミを焼却しないことで二酸化炭素の発生を抑制につながる、環境に配慮した取り組みです。


コンポストは、コンポスターと呼ばれる道具に入れて作ります。設置型や電動型とさまざまな種類があり、初心者はどれを使うか迷いますね。そこでおすすめなのが、バッグ型のもの。大きくてゴミ箱のような形が多い中、こちらはコンパクトで見た目もおしゃれです。


また、堆肥化の過程でにおいや虫の発生などのトラブルが起こりやすいのですが、こちらはファスナーで密封するのでマンションのベランダでも気軽に始められます。生ゴミを1日1回かき混ぜて、3週間程度熟成させると完成します。


コンポストには、入れて良いものと入れてはいけないものがあります。


・コンポストに入れて良いもの

野菜や肉、魚、炭水化物などの人間が食べるものや、落ち葉や雑草、生花など


・コンポストに入れてはいけないもの

分解しにくいもの……貝、豚・牛・鶏の骨、栗・たけのこ・とうもろこし・玉ねぎの皮

殺菌作用があり発酵を妨げるもの……かんきつ類


できた堆肥は、家庭菜園やガーデニングに活用しましょう。自家製堆肥を使って作った野菜は、格別の味わいになりそうです。


ゴミを完璧にゼロにすることは難しいですが、減らしていく取り組みはいろいろあります。まずは、できることから試してみませんか。



文 / 松原 夏穂