コラム
コンパニオンプランティングで野菜づくり

コロナ禍を経て健康の大切さを実感した影響から、農薬や化学肥料をなるべく使用しない野菜を求める、健康志向の高い消費者が増えてきました。また、最近では家庭菜園や都市部のビルの屋上などで、野菜づくりに取り組む人もいます。


しかし、いざ野菜づくりを始めてみると思うように野菜が育たなかったり、枯れてしまったり、また害虫が発生したりといった悩みに直面するようです。そんなときにオススメなのが、コンパニオンプランティング(共生栽培)です。


今回は、農薬や化学肥料になるべく頼らない野菜づくりに取り入れてほしい「コンパニオンプランティング」の基本とその効果、オススメの植物の組み合わせ、共存させることで得られるエコシステムについてご紹介をします。



コンパニオンプランティングとは?


相性の良い植物同士を一緒に植える方法のことをコンパニオンプランティング(共生栽培)と言います。人間関係と同じように、植物にも相性があります。仲の良い植物同士を​​混植して育てることで個々の特性が発揮され、害虫防止、植物の病気予防、生長促進などの効果があると期待されています。植物の特性を生かすことで、農薬や肥料に頼らない野菜を育てることができるのです。コンパニオンプランティングを行う3つのメリットについて解説します。



①害虫防止

害虫は匂いを頼りに好きな植物に近付いてくるため、異なる種類の植物を混ぜることによって、好みの植物を探しづらくする効果が生まれます。例えば、玉ねぎやにんにく、ハーブなどの匂いが強い植物や野菜を植えることによって、その匂いが苦手なアブラムシなどの害虫が寄り付きにくくなります。


また、かぶや大根などの根菜系にはマリーゴールドを一緒に植えることで、害虫であるセンチュウを駆除する効果があります。


②植物の病気予防

異なる種類の植物を植えることで、病原菌を減らす効果が期待できます。例えば、なすやトマトを、ねぎやニラなどのネギ科の野菜と一緒に混植すると、ネギ科の根に共生する微生物が病原菌を防ぐ役割を果たすため、なすやトマトの病気防止につながります。



③生長促進

相性の良い植物を一緒に植えることで、草丈が伸びたり収穫量が増えたりといった生長促進の効果が期待できます。例えば、背の高い植物と背の低い植物を混植すると、背の高い植物が背の低い植物を風から守ったり、日陰を提供したりするため、それぞれの植物が適切な環境で成長できます。


また、野菜の根や茎から分泌された栄養素によって、植物同士がお互いの成長に良い影響を与え合う相乗効果も期待されています。



オススメの植物の組み合わせ

コンパニオンプランティングの効果が実感できるオススメの植物の組み合わせを紹介します。



<トマトとバジルの組み合わせ>


トマトには、アブラムシやミバエが付きやすいのですが、バジルの香りでそのような害虫を寄せ付けにくくする効果があります。また、トマトは乾燥に強く、バジルは水分を好みます。よって、バジルがトマトの余分な水分を吸収をするため、土壌の水分が適切に保たれるのです。


トマトとバジルは料理でも相性抜群。一緒に栽培をし、収穫をして食べるときにも相性が良いのがメリットです。



<にんじんと大根の組み合わせ>


両方とも根を深く張る直根性のため、土の中の空気の通りが良くなることで根が育ちやすくなります。また、キアゲハの幼虫はセリ科のにんじんを好みますが、アブラナ科の植物を嫌うため、にんじんとアブラナ科の大根を混植することによってキアゲハを寄せ付けにくくする効果を発揮します。反対に、大根にはアブラムシやモンシロチョウやコナガの幼虫が付きやすいので、注意が必要です。


このようにそれぞれの野菜の特性を知った上で混植することによって、害虫防止につながります。



共存させることで得られるエコシステム


なるべく農薬や化学肥料に頼らなくてもいい「コンパニオンプランティング」に取り組むことで、環境への負荷を減らしながら野菜を育てることができます。相性の良い植物を混植することで、植物の強みが発揮されてお互いに良い影響を与え、共生しやすくなります。


このコンパニオンプランティングの世界に見られるように、地球の環境にはさまざまな生態系が存在し、生態系同士も影響をし合っています。植物や動物、微生物などは、食物連鎖などの物質とエネルギーのやり取りを通して、複雑で微妙な関係とバランスを保ちながら共存しています。


このような仕組みによって水や土、大気などの自然を構成する要素と、多様な生物、自然界の物質とエネルギーのやり取りを合わせて「生態系(エコシステム)」と言います。生態系が一度崩れてしまうと取り戻すのは困難です。そのため、私たち人間も共生する方法を探っていく必要があります。




今回は「コンパニオンプランティング」の基本と効果、植物のオススメの組み合わせ、共存させることで得られるエコシステムについてご紹介をしました。


おいしい野菜づくりをしながら、私たちの生態系を守ることにもつながるコンパニオンプランティング。この春から挑戦してみてはいかがでしょうか。



文 / 山縣 里美