2024.01.26
人が生きていくために必要なもの、それはもちろん食べ物です。食料を安定的に供給するためには、国内の農業生産を増やすことを基本にしつつ、輸入と備蓄を適切に組み合わせることが必要と言われています。
農業生産を増やすために、農業に関するいろいろな取り組みが国内外で行われています。農業をより深く理解するため、今知っておきたいキーワードを紹介します。
今の農業で重視される“持続可能性”
これまでに「食料自給率」という言葉を耳にしたことがある人は多いかもしれません。これは、食料の国内消費に対する国内生産の割合を示したもの。つまり、国民が消費した食料に対して国産がどれくらいかを表す数字で、日本の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースで63%となっています(2023年2月、農林水産省)。
この数字から分かるのは、日本の食料は輸入に依存している割合が大きいということ。食料の生産は異常気象などによって生産量が不安定になる場合があり、農産物を輸出している国の数が実は限られているといった事実を踏まえると、国内で生産することがとても重要であると分かります。
しかしながら、食料やその生産に関する課題は多く、SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速しているため、農林水産省ではこれらに的確に対応して、「持続可能な食料システム」を構築することが急務と判断。2021年5月、食料・農林水産業の“生産力向上”と“持続性”の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しています。
農林水産省のホームページにその内容が詳しく掲載されているので、これからの日本の農業の在り方や未来が気になる人は、ぜひチェックしてみてください!
環境保全や環境負荷の軽減につながる
農業は地方で行われているのであって、都心部には関係ない……と思われるかもしれません。しかし、東京都の食料自給率を見てみると、カロリーベースで0.47%とかなり低い割合ですが0%ではありません。
さらには近年、都市農業(市街地およびその周辺の地域において行われる農業)は都市にあるべきものと見なされて、都市農業における多様な機能が注目されるようになりました。その機能には、以下の6つがあります。
<都市農業の6つの機能>
先の「みどりの食料システム戦略」でも伝えた通り、農業において“生産力向上”だけではなく、“持続性”との両立も求められているなか、都市農業でも環境問題への貢献が重要になってきます。都市に農地があることで、ヒートアイランド現象(郊外に比べて都市部ほど気温が高くなる現象)を緩和したり、鳥や昆虫などの生物にすみかを提供することで「生物多様性」を保全・向上させたりする役割があると言われています。
また、「フードマイレージ」を減らすことが、環境負荷の軽減につながります。フードマイレージとは、「食料の輸送量(t)」と「輸送距離(km)」を掛け合わせた指標のことです。輸送距離が長いほど多くのエネルギーを消費して二酸化炭素の排出量が増加するため、食料を輸入するよりも国内産のものを消費する、さらには国内産でも産地に近いものを消費する方が環境負荷が低くなります。
都市部で育てられた新鮮で、安全安心な農産物が手に入ることは、消費者にとっても環境にとっても好ましいことなのです。
都市農業をさらに身近に感じる
「アーバンファーミング」
世界各地で「アーバンファーミング」が行われています。これは、都市で実践されている農業のことです。その方法や目的はそれぞれの地域や団体ごとに異なりますが、新たな農業技術を取り入れたり、環境負荷を減らした持続可能な農業を目指したり、また地域コミュニティとしての場を提供したりなど、さまざまです。
例えば、アメリカ・ニューヨーク市では3つの屋上農場で年間約45トンの有機栽培の野菜を生産して、ファーマーズマーケットや地域支援型農業(CSA/※1)で販売しています。市民に新鮮な野菜を供給するだけでなく、教育プログラムやコミュニティイベントも実施しています。
※1)生産者と消費者が連携して前払いによる農産物の契約を行い、互いに支え合う仕組み。
また、シンガポールでは、立体式野菜栽培システムや屋上農園が導入され、限られた土地を有効活用しながら省エネルギー、最小限の水で野菜が栽培されています。都市部で安全に食料が供給されるこのシステムは、次世代の都市農業として注目されています。
日本国内でも「アーバンファーミング」の取り組みが多く見られるようになり、都内の高架下や店舗内に水耕栽培の工場が造られたり、駅の屋上に貸し農園が誕生したり。また、アーバンファーミングに取り組む市民団体や、アーバンファーミングの魅力について書かれた書籍もあるので、興味のある方はアクセスしてみてはいかがでしょうか。
農業を深く知ると、
暮らしが豊かになってくる
農業にまつわる課題や取り組みは複雑で、難しいと感じるかもしれません。しかし農業に関する情報発信が多く行われており、農業に関する取り組みに参加できるチャンスもあります。
もっと知りたい、体験してみたい人は、積極的に行動してみましょう。知って体験することで、毎日の暮らしがもっと楽しくなるはずです!